ココロが軽くなるメンタルケア 先輩社員の指導方法

一般社団法人 認知行動療法研修開発センター
理事長 大野 裕

 この春に入社した新社会人の男性です。会社では先輩社員のもとで仕事を覚えることになっているのですが、私の教育担当の先輩があまり仕事を教えてくれずに悩んでいます。入社当初は「なんでも聞いて」と言われていたので、わからないことがあればすぐ先輩に質問し、解決するようにしていました。
 ところが半年たったあたりから、私が仕事の進め方など質問すると迷惑そうな表情を浮かべるようになりました。質問にもろくに答えてもらえず「まず自分で考えてみて」と突き放されることが多くなりました。とはいえ経験もない私が案を出してみたところでダメ出しされるばかりで、結局は先輩の言う通りに進めることになるのです。であれば初めから先輩が指示してくれればいいのに、そうしないのはパワハラとしか思えません。確かに先輩はいつも忙しそうで、おそらく面倒を見る暇も惜しいのでしょうが、こんな非効率で無意味な作業をやらされることがストレスでたまりません。

いつまでも受け身の指示待ち姿勢では成長につながらない

 コロナ禍でさまざまな交流が制限されるなか、慣れない仕事に取り組んで苦労が多いと思います。さて、ご質問を読むかぎり、入社当初は先輩も教えてくださっていたようですが、半年経つころから自分で考えるようにおっしゃるようになったのでしょう。
 仕事の内容にもよるのですが、先輩のこの対応は自然な変化のようにも思えます。まったく初めての仕事を新人に任せてしまうのは、仕事の進捗に影響しますし、新人にとっても負荷が大きすぎます。ですから、新人が仕事に慣れ、自分で取り組めるようになるまでは先輩や上司が教えながら仕事を進めることは必要です。
 しかし、半年も経てばある程度の内容や手順がわかるようになっているはずですから、まったくの新人のときのように手取り足取り教えるのは教える方の負担になるだけでなく、教わる方の成長の妨げになる可能性さえあります。そう考えると、先輩が、「まず自分で考えてみて」とおっしゃるのは自然な対応のように私には思えます。
 そのように言われて自分で考えた案を出してダメ出しされるとたしかにガッカリするでしょうが、経験が少ないことを考えると、やむをえないことではないでしょうか。

ひとつの考えに固執せず人の意見を吸収して見識を広げるとき

 しかし、ご質問を読むと、その後にどのようにすれば良いかを先輩が言ってくださっているようです。
 そうだとすれば、その助言をもとに自分の案の不十分な点について再考し、今後の工夫につなげていくことができれば、その体験は無駄にはならないはずです。


大野裕先生監修の認知行動療法活用サイト『こころのスキルアップ・トレーニング』
うつや、日常生活のちょっとした不安、ストレス、イライラを抱える方に向けた、プチうつ、プチ不安への対処などを支援するサイト。